カビの発見と駆除

ゲアハルト・フューラー博士 著

公的に任命された室内有害物質に関する鑑定家

ドイツ環境毒性および人間毒性協会(DGUHT)理事

「健康な住まい」研究チームスポークスマン

 

2004年ヒンメルシュタット

1 カビと健康

カビは有機的残滓を除去し、腐植土形成とミネラル化に貢献する。このように、カビは生物的物質循環にしっかりと組み込まれている。人間は、周辺環境に存在するカビに順応している。すなわち、この微生物に対する高度な自然耐性を持っているのだ。しかし、カビは人間と物質に被害を及ぼすこともある。室内のカビの数が増え、病気を引き起こす(病原性の)カビが現れ、さらに、その部屋の使用者の免疫力が衰えている場合は問題だ。死んだカビも毒性をもつ、あるいは、アレルギーを引き起こすことがある。Stachybotris charatarumというカビの販売は禁止されている。研究目的の場合のみ、厳格な条件下での取り引きが許されている。このカビは生物兵器として使用することも可能なため、戦争兵器監視法の対象にもなっている。そして−このStachybotris chartarumは室内にも存在するのである。

カビと健康

   

 

体の不調(主観的)

     頭痛   ・倦怠感  ・集中力の欠如  ・記憶障害  ・気分がすぐれない

     感染しやすい

症状(客観的)

     目の痛み  ・鼻づまり、鼻水  ・再発性副鼻腔炎  声がれ、のどのかゆみ

     咳き  ・息切れ  ・気管支炎   ・喘息の悪化
1.1    健康に対する潜在的危険性

原則的にすべてのカビがアレルギーを引き起こす可能性をもっている。アレルギー反応には、病気のメカニズムおよび臨床症状に応じて4種類のタイプがある。その中で、IgE抗体が関与するタイプTが最も重要だ(暴露から10分から20分後に出現する即時反応)。タイプV(IgG抗体が関与、暴露から3時間ないし4時間後に出現する遅発型)および、Tリンパ球の感作によって引き起こされるタイプW(遅発型、接触型アレルギー反応)も重要だ。カビは、分解生成物と同様、細胞壁(グルカン)から、皮膚と粘膜に対して毒性を発することがある。カビによる感染はまれで、起こるとすれば気道感染が最も多い。感染しやすいのは、免疫が弱っている人だ。

図2:アスペルギルス・ベルシコル(室内に発生するカビの典型的な例)アスペルギルス・ベルシコル:

室内によく発生するアスペルギルス属のカビ

     何千個という胞子の形成

     臭いの発生

     MVOC(微生物起源揮発性有機化合物)の形成

     マイコトキシン生成の可能性

     湿害のインジケーターとなる有機体

ヒトが大量のカビの胞子を吸い込むと、過敏な体質の場合、アレルギー症状(喘息、鼻炎、眼の炎症など)を引き起こすことがある。アレルギー体質の人(いわゆるアトピー体質の人)では感作する可能性がある。菌糸体を形成する放線菌などの細菌の場合も、胞子がアレルゲンとなり得ることを考えておく必要がある。アスペルギルス・ベルシコロル、ペニシリウム属、アクレモニウム属のような種々のカビが出現した時は、胞子に含まれる毒素(マイコトキシン)が健康被害を引き起こすさらなる脅威になることを考えておかねばならない。カビによる揮発性有機化合物(MVOC=微生物起源揮発性有機化合物)の形成により、臭いが生じることは知られている(特に、かびくさく土のような臭い)。臭いに特に敏感な人は、MVOCによってひどい不快感を覚えることがある(例えばラデュンツ1998年を参照)。健康に対する危険度を左右するのは、室内空気/吸入する空気中の汚染の規模や胞子と他のカビ成分の濃度、汚染された部屋での滞留時間、部屋の使用者のそれまでに被害状況などである。

1.2 室内のカビ

イエナ大学のブラッシェを中心とする研究者達による研究(2003年)「住宅における湿害の原因と健康への影響−ドイツの代表的な住宅の調査結果」は次のような結果を報告している。調査した5,530戸の住宅のうち、1,213戸(21.9%)が視認できる湿害(カビを含む)を受けており、513戸(9.3%)にカビによる被害が認められた。住人12,132名からは、アレルギーおよび喘息の発症頻度を把握した。その結果、自己申告してもらったアレルギー疾患および呼吸器疾患の頻度と湿害の関連性を証明することができた。

2 カビの生態と生物学

2.1 成長の条件

室内は栄養源となる有機物質に事欠かない。損傷を受けていない建物では、水が足りないだけだ。つまり、湿害が起きると、微生物による被害を受けるのは時間の問題なのだ。しかし、グラスウールやミネラルウールのような無機建材(無機、低エネルギー)もカビによる被害を受けていることが多い。このような建材では、材質改善のために(主にばらばらの繊維を束ねるため)フェノールホルムアルデヒド樹脂などを使うが、この有機化合物はエネルギーが豊富でカビにとって栄養となるからだ。

カビが苦手なのは、アルカリ性の環境だ。酸性の環境では非常によく繁殖できるカビがいくつかある。

2.2 カビの体制

カビは主に、菌糸体(根に似た集合体)、子嚢果【?訳註:原語はFruchtkörper】、胞子という3つの部分から構成されている。カビは代謝しており、栄養を吸収し代謝生成物を発する。主に高濃度のアルコールだ。このプロセスはビールで知られている。ビール酵母(糸状菌)は麦芽糖からアルコールと炭酸を作り出す。微生物学では、微生物が出すガス状の代謝物質で室内の空気中に放出されるものをMVOCと呼ぶ。カビができていると、室内の空気に胞子が存在していなくてもMVOCが出現する。カビ/湿害問題で一層深刻な問題となるのはカビ毒(マイコトキシン)だ。

図4:カビの構造(vbn、トップテーマ・カビ2001年より)

カビの体制

MVOC

Sporen 胞子

Myzel 菌糸体

Zellinhaltsstoffe 細胞内容物

2.3 発育段階

胞子が成長に理想的な環境に出会うと、出芽後、菌糸を形成して菌糸体を作る。これが成長段階と呼ばれる段階だ。次に繁殖段階が始まる。繁殖段階では、棒状の分節(胞子嚢)ができ、その上に胞子ができる。胞子が成熟すると放出され、室内空気を汚染する可能性がある。カビは、このような無性生殖の他に有性生殖もできる。こちらは、室内環境にとってあまり問題にならない。

3 湿気が無ければカビは成長しない

湿気をもたらす原因は非常に複雑な場合がある。配管の破損、不適切な使い方、熱橋や防湿層の不具合などの建築施工上の欠陥である。複数の要因が重なることが多い。ひとたび湿気が生じると、カビが発生する可能性がある。湿害が生じた後に室内に生じるカビは、黒色、灰色、緑がかった色をしたシミ、あるいは、綿状の起毛として壁や種々の表面に出現する。しかし、これは氷山の一角にしかすぎない。既に「目に見えない」カビの成長段階において、部屋の使用者が異状を感じることがある。

カビはどのように成長するのか?

カビが視認できるようになる   → 胞子 → 菌糸体 → 子嚢果  

カビは1分間(!)に100万個もの胞子を作り空気中に放出することができる。カビ自体は傷つきやすく、比較的容易に除去できる。しかし、胞子は乾燥や水、霜や熱などの極端な環境を耐え抜き、何十年も生き残る。カビは、その胞子故に、非常に抵抗力のあるサバイバルの天才なのだ。胞子にしかるべき発芽条件が与えられると、菌糸体の形成後に子嚢果ができる。その後、再び胞子の生産が始まる。胞子形成の周期は、昼間の時間、季節【P7】、天候によって変わる。胞子の成長が好むのは温暖で湿潤な気候だ。胞子の拡散にとって好適なのは、埃、乾燥した空気、継続的で穏やかな空気の動きである。戸外の空気中のカビの数は真夏が最も多く、晩秋から春先にかけて最も少なくなる。住居内に生えたカビは、主に春と秋に成長する。換気や暖房をあまり頻繁に行わないこれらの季節では、往々にして存在する熱橋の影響もあり、室内の湿度を高める可能性がある。

 隠れた「見えない」カビが存在していると考えられるのはどのような時か?

視認できるカビがある場合は、直ちに処置をする必要がある。これは、隠れたカビでも同じだ。隠れた「見えない」カビの存在を裏付ける要因は複数ある。

     臭い

     建材の種類(熱橋、旧式の軽量建築/プレハブ、外壁の石膏ボード、・・・)

     湿害

     建物使用者の体の不調

     特定の動物種の出現(ワラジムシ、シミ科の昆虫、コナチャタテムシ)

4.1 カビについて知っておくべきこと!

 室内のカビは、使用者の健康を脅かす

     視認できるカビは、健康被害を予防する意味で必ず直ちに除去すること。しかし、裁判や損害補償問題が起きている時は、カビが証拠物件となることもあるので注意が必要だ。

     隠れた「見えない」カビ害は広がっている:文中で、隠れた「見えない」カビが存在していると考えられる要因を指摘した。視認できるカビがある場合は、必ず見えないところにもカビが生えていると考えねばならない。

     抗カビ剤は使用しないこと:殺黴性および生態環境破壊性の有効成分が人間にも悪影響を及ぼす可能性があるので、抗カビ剤(殺黴剤)の使用は控えること。抗カビ剤を使っても、カビ繁殖の原因である湿気を除去することにはならない。さらに、死んだカビも、アレルギーを引き起こす刺激作用をもつことができる。

     酢は用いないこと。塩基性の石灰が酢酸で中和され、有機性栄養素が材質の中あるいは表面に達するからである。これとは関係なく、酸性の環境でも成長し続けるカビは多種存在する。

     殺菌に適しているのは、例えば、70%のエタノールだ。湿気のある下地の場合は、80%エタノール。火災の危険性があるので、使用料は最大0.1リットルとする。

     リフォーム時には埃を出さないよう心がけ、作業員の防護を考えること:カビ/バクテリアは、リフォーム工事時に多く放出される可能性がある。リフォーム時には、埃をできるだけ出さないように注意する。工事後は、二次汚染防止もしくはカビ/バクテリアを含んだ埃を除去するために、念入りなクリーニングを実施すること。専用の掃除機を使用する、あるいは、埃をダクト経由で直接外に導くこと。マスクや眼/皮膚の保護具などの防護策を顧慮すること。

5 カビの予防および除去のために建材がもつべき特性とは?

     透湿性。防湿素材の後ろなどに湿気がたまらないようにするため。

     吸湿性、すなわち、水蒸気を吸収する能力。カビが必要とする湿気が生じないようにするため。

     断熱効果。壁面の温度を上昇させ、結露を防ぐため。

     アルカリ性の製品(高いpH値、塩基性)はカビの成長を阻止する。昔の牛舎は、カビ予防のために繰り返し漆喰で塗られていた。動物の健康維持のために昔から行われていたことは、現代人にとって適切かつ安上がりな方法なはずだ。酸性はカビを繁殖させる。そのため、石膏は、湿気のある環境もしくは湿った状態だと、カビの温床となってしまう。また、石膏製品には通常、成分不明の化学的骨材が含まれている。

6 カビを殺す製品は何か?

このような要求を完全に満たす製品は少ない。そのひとつが、スイス ルッパースヴィルのスイスウォールだ。50年以上にわたって優れた建材メーカーとして有名な会社である。同社の製品は:
1.化学的骨材を含まず、環境に負荷を与えない純粋な自然建材を使用している。通常、このような建材の方が人間にやさしいからである。

2.全ての配合成分を表示しているので、アレルギーに対しても安心である。

3.健康と快適性という基準で、常に製品検査している。

以下に、自信を持って推奨できる製品を紹介する:

スイスウォール カルクウォール(スイス漆喰)

鉱物性の下地にそのまま塗れる仕上げ用あるいは構造用のモルタル。構成成分は高純度の白色石灰砂、高品質の結合材である湿性漆喰と天然の遅延材。スイスウォール社 カルクウォールは硅化によって下地と結合し、呼吸性に優れ、調湿性があり、臭いを吸着する。ペースト状、そのまま施工できる既調合、ナチュラルホワイト、25kg入りバケツ。

 

スイスウォール漆喰塗料(純粋な漆喰塗料)

スイスウォール漆喰塗料は優れた耐候性をもち、室内・室外のどちらにも適した特性を備えている。

スイスウォール漆喰塗料は殺菌作用、保護作用があり、臭いを吸着する。湿性漆喰の優れた特性により、最高の生物学的品質をもった純粋な無機塗料である。溶剤および乾燥剤を使用していないので、環境負荷が無く、廃棄処理についても問題ない。

▲ページのトップへ